100年以上継続している企業数が世界で一番多い日本。そして、その90%程が中小企業であり、先端技術の活用や地域で育まれた伝統と特性を有する企業が多く存在しています。製造業に関わる中小企業の割合が多いのも日本の特徴で、モノづくりに対するこだわりがある一方、技術を時代に合わせて進化できる強みがあるのだろうと思います。

私は日本と韓国の架け橋としてファッション業界を中心に活動していますが、CRAHUGを通してもっと日本のものづくりを掘り下げて色んな方に紹介したいと思い、CRAHUGジャーナルに参加していきます。

今回は、ディレクターである梶原加奈子さんにCRAHUGに参加しているファクトリーブランドのストーリーや裏話、またセレクトした理由を聞いてみました。

昨年開催された槇田商店EXHIBITION 「花、ひらく」
photo via:@makitashoten_1866

CRAHUGに参加しているたくさんのブランドの中で特に一番気になったブランドは〈槇田商店〉。韓国で傘の場合オリジナルブランドが少ないし、製造する工場もあまりないです。多くの人が普段使っている傘はいわゆる3段傘という自動式で折りたたみ式が一般的です。どちらかというとファッションとして楽しむというよりは便利さを求めた傘です。また、主にノベルティ商品のイメージがあるので、デザインにこだわった作り手がいるファクトリーが気になりました。

現在オンワード・クローゼットで販売している「stripe シリーズ」

日本で傘と言ったら〈槇田商店〉

富士山の麓で江戸末期より伝統織物の技術を継承し、傘の生地、ストール織物、服地の生産をしている槙田商店さん。特に「全幅」と言われる140cm幅の大口電子ジャカード織機に特徴があり、加奈子さん曰く、大胆で繊細な柄を表現できることで発注が相次ぐ人気の織物工場さんです。自社でも傘の製品ブランドをスタートし、1枚の絵のような織物から生まれる独特なパネル柄からアートのような傘を生み出しています。

職人の手で丁寧に作る傘は多くの過程を経て出来ています
photo via:@makitashoten_1866

山梨県富士吉田市地域で156年間の歴史

CRAHUGに参加している工場の中でも、長い歴史がある槙田商店さんは1866年に創業し、156年継続しています。加奈子さんが初めて傘を作ったときも、問屋さんを通して槙田商店さんに生地の制作を依頼したことがあり、10年ぐらい前から槙田商店さんのことは知っていたそうです。傘やストール生地以外にも、ポリエステル素材の大胆なパネル柄ジャカード織物の服地を作れる工場さんとして大活躍が続いています。感度の高いブランドから次々と依頼があるので、デザイナーのリクエストに対応していくことで技術的にも進歩したのではないかと思います。国内でも数少ない140cm幅の大口電子ジャガードの織機柄で生地を作ります。

常にチャレンジし進化するものづくりを

5代目社長(現会長)の槙田則夫さんの言葉でもありましたが、設備や人に投資することや時代の変化を受け入れてモノづくりをしてきたため、常に新しい商品に挑戦を続けてきたそうです。このような姿勢を見てきた加奈子さんは、CRAHUGサイトを立ち上げた直後にファクトリーブランドとして先駆的な存在でもある〈槇田商店〉の傘を紹介したいと思い、6代目社長の槙田洋一さんに電話をしました。CRAHUGの工場と共に日本のものづくりを推進していく考えに共感してもらい、参加が決まった後は、オンワード・クローゼットを通して安定的に販売にも繋がっていると思います。

「菜-sai-シリーズ 日傘」
photo via:@makitashoten_1866

                                       ここにしかないオリジナル素材の傘は、傘の市場の中で決してリーズナブルな価格ではないと思いますが、1枚の絵を持つような感覚で暮らしを楽しくする魅力的なアイテムなのだろうと思います。

学生と取り組みから発展し、野菜のような見た目をした楽しい日傘
photo via:@makitashoten_1866

長い間企業を続けることが出来た理由は?

時代に合わせて柔軟に変化しながらも、自社の強みを活かした事業を継続して育てている経営者がいることが、長くブランドを持続できる理由の1つだと思います。

〈槇田商店〉は自社ブランドの傘製品を始めてから、様々な売場でポップアップを続けて開催し、多くのファンと繋がってきたのだろうと思います。一般のお客様に会えば生の声を聞くことができるし、また、そこで聞いた意見などを活かせば次の企画やイベントなどにも反映できます。このようなにお客様と出会う場が増えていけば、ファクトリーブランドも成長するチャンスが広がると思います。

毎年工場見学などを行い、地域の伝統産業を伝える
photo via:@makitashoten_1866

晴雨兼用の傘。プレゼントにも最適!

ジャガード織物の傘だけど雨の浸透や水漏れを防ぐ防水コーティングや水を弾く撥水加工が施されているので雨の日にも使える。日傘としては紫外線をカットするUV加工もあり晴雨の両方で使うシーンの幅が広いことも特徴です。先日加奈子さんは母の日に槇田商店の傘をプレゼントしたそうです。華やかな色合いを持って楽しく過ごしてほしいと願う気持ちや良いものを長く大切に使って欲しいと話していました。傘は記憶に残る贈り物にもなる存在ですね。

日本人は気に入ったモノを修繕しながら長く使う習慣がありますが、韓国ではあまりそのような考えがなく、魅力的な商品があれば新しく購入します。モノを大切に考える意識が高い日本人の習慣があるからこそ工場が作る高品質な一品が生きるのだろうと思います。さらに、お客様と共に成長することを考え、ものづくりの進化を心掛けている職人魂が企業の持続を支えているのではないでしょうか。

雨の日も晴れる日もファッションの一部として使える晴雨兼用の傘を多く展開
photo via:@makitashoten_1866

  • 株式会社槙田商店

    株式会社槙田商店

    1866年創業当時、産地の織物を取り扱う甲斐絹問屋として山梨と消費地をつなぐ仕事を行っていましたが、時代の変化に対して臆することなく、設備や人に投資すること、自分たちで考えて企画すること、自社で作ること、自分たちで売ること、と次第にあり方を変えながら発展してまいりました。そんな新しい取り組みに挑戦できたのは、山梨県の西桂町や郡内地域の皆様に支えていただけたこと、常に西桂町・郡内地域でのものづくりにこだわれたことが大きな力だと感じています。常に西桂町とともにあり、ともに未来へと歩んでいける、それが槙田商店のあり方です。

Text & Photo:
ジョ・テジョン

日本と韓国の架け橋としてファッション業界中心に活躍しているコーディネーター兼ジャーナリスト。特に日本のモノづくりに興味を持ち、もっと多くの人に伝えていくためにCRAHUGチームの一員として参加。

Date: 2022.12.01

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