【特集】

東京の染め場で作られる
creperieのインディゴブルー
株式会社内田染工場

明治の時代から続く染色の街、東京・文京区白山。 昔ながらの住宅街が広がる、どこか懐かしさを感じる街並みの一角にあるのが、明治時代から続く染色工場〈内田染工場〉。

CRAHUGで取り扱う〈crêperie TSUMORI CHISATO(クレプリ ツモリチサト)〉のインディゴ染めアイテムも、この場所で一枚一枚丁寧に染め上げられています。

今回は、染料の濃度や温度、素材との相性を一枚ずつ見極めながら、丁寧に染め上げる工程の裏側を取材しました。

ひとつとして同じ表情のないインディゴブルーは、どのようにして生まれるのか。 長い歴史の中で培われた技と奥深いものづくりの世界を、株式会社内田染工場・代表取締役 内田光治さんの言葉を通して紐解きます。

創業の物語と継がれる染めの魂

-創業当時からの内田染工場の歴史について教えてください。 【内田さん(以下敬称略)】明治42年の創業で今年で116年目になります。祖父の代からで、私で3代目になります。

先祖は群馬県桐生市の出身で、織物の産地で代々呉服の販売を行っていました。 次男である祖父が東京に出てきて、千川通り沿いの染工所で何年かの修行を経て開業したという経緯があります。 当初は呉服の染め物が多かったのですが、和装から洋装に移り変わる時代背景の中で、靴下関係の染色に移行していきました。 戦時中に一時桐生市に疎開した際には、靴下の製造業も行っていたようですが、戦後東京に戻り、父の代で靴下の糸の染などから再び染色業をスタートさせました。

株式会社内田染工場・代表取締役 内田光治さん

-ものづくりの道に進まれたきっかけを教えてください。 【内田】私が物心つく頃には靴下の染色業が中心で、今機械が置いてある場所が住まいだったので、部屋の中も靴下で埋め尽くされていたような状況でした。 その当時は周りも工場に囲まれていて、そのような環境で育ったので事業を受け継ぐのが自然な感覚で、大学卒業後にすぐに後を継ぎました。

職人の技と染めへの想い

-内田染工場の強みを教えてください。 【安田】”地の利を活かす”というところが一番の強みだと思っています。お客様の中にはデザイナーブランドやコレクションブランドが多く、ギリギリまでこだわり抜くデザイナ-さんたちの急な要望にも柔軟に対応できることが、この工場の強みです。 技術面でも、職人は日々の業務を通じて短い時間でどれだけお客様の要望に応えられるかをみんな必死に考えながら仕事をしています。 若手スタッフが集まった開発チームもあって、実験的な染色や加工をする中で新しいアイデアが生まれ、 お客様の難しい要望にも応えられる引き出しをいろいろ持っていること、それを活かした柔軟な対応も他にはない強みなんじゃないかなと思っています。

-モノづくりを続けてきて大変なことや、難しいなと思うことは何ですか? 【内田】納期がない、新しいものを作り続けていく仕事は難しいなと感じます。 さらにショーなどの仕事になると、新しいものを作り続けながら、お客様のオーダーにどう応えていくかを考え続けなくてはいけないので、難しさも感じますが同時にやりがいも感じています。

ひとつひとつ手作業で染められるインディゴ染め

-モノづくりの中で大切にしていることは何ですか? 【内田】お客様の要望を真摯に受け止め、できる限り丁寧に対応することを常に心がけています。 無理だと思う場合も、可能性があるかどうかを確認し、スタッフと相談してトライする姿勢を大切にしています。 たとえ希望通りにいかなくても、思わぬ良い結果につながることもあり、お客様に喜んでいただけたときには信頼関係が深まります。 このような経験の積み重ねが、次の仕事につながる力になっています。

-新たな染めの技術を考え続け、ものを作り続ける中で喜びを感じる瞬間はどんな場面ですか? 【内田】やはり、皆さんが知っているようなイベントやファッションショーなどに出展して、染めの技術が注目されることが一番うれしいです。また、関わった商品を購入されたお客様から「喜んでもらえた」というメールを1つもらうだけでも、日々のやりがいにつながっています。

出会いと今後の挑戦

-crêperie TSUMORI CHISATO(クレプリ ツモリチサト)とのお取り組みはいつから始まったのでしょうか? 【内田】crêperieとの最初の仕事は約3年前で、紹介を通じて依頼を受けたのがきっかけでした。 取り扱いのあるインディゴ染めはすべて手作業で行うため、他の仕事を止めなければならないことからあまり引き受けてはいませんでしたが、 ブランドの強い思い入れを感じ、職人と相談の上で挑戦してみようと思い、お引き受けしました。

-最後に、今後の展望について教えてください。 【内田】ここ2~3年間、海外の展示会やイベントに参加し、日本を代表する縫製工場や生地屋さんとの繋がりを通じて染めのオーダーをいただく機会も増えています。ものづくり日本の仲間との交流は、とても意義のある経験ですので今後も積極的に続けていきたいです。 また、今後は本業である染めを大切にしつつ、海外でのネットワークや経験を活かし、自社ブランドの展開にも挑戦していきたいです。

遊佐歩央

Date: 2025.11.20

食べ歩きと旅行が趣味のCRAHUG・SNS担当。

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