【特集】

【梶原加奈子の想いごと対談】
ハッピーが持続する
シンプルで使いやすい
エクエルのデザイン

Hekhèr Le Style de Vie(エクエル ル スティル デヴィ)のバッグを制作しているHAY Design の磯部速人さんにブランドの背景やこだわりを語っていただきました。

ハンドバッグの企画販売に関わるまでの道のり

梶原:まずはブランドの運営についてどのような役割を担われているかをお伺いできたらと思います。

磯部さん:企画立案から販売、商品管理、経費経理まで私が担当し、プロモーションは外部の方にサポートいただいております。

梶原:磯部さんがほぼ1人で運営しているようで、ご多忙ですね! CRAHUGでバッグの販売を開始してから、すぐに受注が相次いでいたのが印象に残っています。 在庫切れにもなり、追加生産の手配も大変だっただろうと思います。ONWARD CROSSETのお客様と相性が良いですね。

磯部さん:ありがとうございます。私がターゲットとしている40代、50代の女性の購買層が多いと感じています。商品もできるだけ欠品がないような対応を今後も続けていきたいと思っています。

梶原:まずは、どのような流れでハンドバッグ作りを始めたのか、磯部さんの経験をお伺いできればと思います。

磯部さん:10代の頃からファッションと音楽に大変興味があり、雑誌やお店などを見て熱中する日々でした。大学は経済学部でしたが、進路を考えたとき、ファッションを提供する側の仕事がしたいと思うようになりました。ご縁があったのが、名古屋に本社を置いているハンドバッグの商社でした。バッグも広い意味ではファッションの一つだと思い、この会社に入社したのが最初の一歩となりました。

梶原:中学生の頃から何か表現することに興味があったのですね。入社後はどのようなお仕事を経験されましたか?

磯部さん:私が入社した頃は、有名ブランドのライセンスを中心とした事業が盛んでした。新宿の百貨店でハンドバッグ売場を4年間営業として担当させていただきました。その後、名古屋本社に戻り、計6年間ほど営業を続けていたころに、日本のバッグ業界全体がライセンスビジネスから転換していく流れがあり、この方向性の終焉を感じました。この頃に、商品の開発から販売戦略までを一貫とするMD(商品化計画担当)としての声がかかり、同時に自社のPB(オリジナルブランド)の立ち上げもすることになりました。

梶原:売り場での経験を積み上げ、お客様のニーズを掴んだ上で、営業から企画まで計画できる立場となられたのですね。 常に未来の市場をイメージして、自分の考えがあったからこそ、次のステップに進む機会を掴めたのではないかと思います。

磯部さん:1999年頃から色々な展示会をまわってハンドバッグを企画するようになりました。もともと英語が使えたものですから、香港のハンドバッグメーカーさんと協業し、牛革だけでメッシュを編みしたバッグをデザインしました。これが非常に大ヒットして私の中では成功体験としてあります。 今でもこの香港のハンドバッグメーカーの社長さんとは親しく、交流が続いています。

この時期はMDや企画に関わり、すごく充実して過ごしましたが、2005年、当時私が協業させていただいていた会社から、バイヤーとして転職してきてくれないかというオファーを頂き転職をしました。 その後は、義理の父が運営する宝飾会社の経営をサポートするため、2011年の秋から2020年まで、代表取締役社長を務めることになりました。

その後代表取締役を退任し、いよいよ自分の新しいビジネスを考えた時に、もう一度バッグをやってみたいと思い、Hekhèr Le Style de Vieというブランドを2021年の秋に立ち上げるに至りました。

梶原:様々な経験を通して広い視野を持った上で、バッグに再び戻り、ブランドの立ち上げに至ったのですね。

磯部さん:MDや企画の経験で、ものづくりに関する勉強できましたし、その後の宝飾の会社で経営や経理財務を身につけることができたので、これからは自分と家族が幸せな生活をしていければいいな…という気持ちでブランドを始めようと思いました。

Hekhèr Le Style de Vieロゴとシュリンクレザー スクエアショルダーバッグ

ブランドに込めた想い

梶原:特徴的なブランド名ですが、由来を伺いたいです。

磯部さん: Hekhèr(エクエル)の部分は私が作った造語になります。hkhrは、私の家族のファーストネームから取っています。私が速人でh、妻が貴美子のk、長女が晴花でh、長男が隆太郎のrです。 ブランディングを考えたとき、家族の名前をブランド名に取り入れたいと思い名付けました。

梶原:家族を起点とした想いから、このネームが生まれたのですね。磯部さんがご家族との生活を大事にしている気持ちが伝わります。Le Style de Vie(ル スティル デヴィ)はフランス語でライフスタイルという意味ですね。

磯部さん:そうです。ブランディングについては、コロナ渦の2020年から構想を練っていました。閉鎖的で身動きが取れないような時間が、この先どのぐらい続くのだろうという不安がある中で、バッグだけでなくライフスタイルまで提案できるブランドにしていきたいと思い、Le Style de Vieを加えました。

梶原:ご家族との暮らし、優しい交流のイメージが思い浮かびます。ブランドのコピーライトにもなっている、「ライフスタイルをもっと素敵にハッピーに」というコンセプトに込めた思いとしては何かありますか?

磯部さん:ハンドバッグは女性にとって、ほとんどの方が好きなアイテムで、持っていてもまた次の新しいものが欲しくなるようなファッションアイテムだと思います。 例えば大金をはたいて買ったバッグだけど、持つと重たいし使いにくいバッグは、ちょっと残念に思います。だからこそ、購入してから実際に持っていると何だかウキウキする、ハッピーだと思ってもらえるようなバッグを作りたいと考えています。

梶原:使っていくうちに、さらに幸せを感じられるようなプロダクトを提供したい気持ちが表現されていますね。

磯部さん:Hekhèr Le Style de Vieの商品展開も最初はハンドバッグですが、いつか「家族との暮らし」というキーワードで例えばレストラン、あるいは雑貨屋さん、何かのサービス…いろんなものを展開できる可能性があると思います。

人と人の絆から生まれるバッグ作り

梶原:様々な経験を重ねてきた磯部さんとしては、デザインの可能性を絞ることが容易ではなかったと思いますが、最初にターゲットのお客様像を思い浮かべていましたか?

磯部さん:一番身近なところで、妻が気軽に持てるようなバッグをイメージしました。

メーカーさんとのバッグ制作風景

梶原:最初に取り組んだ縫製工場さんはどのように知り合ったのですか?

磯部さん:私がMDをしていた時代に、一番協力的にそのPBを作ってくださっていた担当の方にお願いしています。 2020年の秋ぐらいに、彼にもう一度連絡を取って、実はバッグのブランドを立ち上げたいので力を貸してくれますか?と尋ねました。二つ返事で磯部さんのためだったら、一肌でも二肌でも脱ぎますよと言っていただきました。最初は工場にあった革で仮に作ってみようかと、ゼロからたたき台を作っていただきました。そして、すごく小さい発注から協力をしていただきました。 ブランド立ち上げからずっと支えてくれている大切なビジネスパートナーです。

梶原:生産者との繋がりが今までの経験の中でしっかり構築できており、お互いにモノづくりやビジネスに向けて気持ちが共有できるのは嬉しいですね。

ハンドバッグの特徴とこだわり

梶原:次はバッグについて色々とお伺いしたいのですが、1番最初に作ったアイテムは、どの商品になりますか?そして、どんな部分にこだわりましたか?

磯部さん:3つありますが、1001番のトートバッグ、1003番の小さい方のトートバッグ、1005番の縦型のショルダーです。この3型が最初にデザインを起こしたものになります。

磯部さん:一番モノづくりで気をつけているのは、素材の見極めです。牛革は上を見ればきりがないのですが、できるだけ手に取っていただきやすい価格でお客様に提供するということを考えると高級な革を使えばいいというわけではないと思っています。リーズナブルで、革の柔らかな風合いや特徴を上手に使っていけるものを選ぶように意識しています。デザインもシンプルで普遍的なものを基本としています。いつでも使っていただける、タイムレスなデザインをしていきたいと意識しています。

バッグの制作風景

梶原:バッグを拝見したとき、ポケット使いへのこだわりを感じました。何か考えている点がありますか?

磯部さん:実用的なバッグを提供したいので、お客様に日常で使っていただく時にストレスを感じさせないということが一番大切だと思っています。そのため、バッグの中身のポケットデザインは機能性を重視しています。例えば携帯がしまいやすいとか、定期入れ用のポケット、あるいはファスナーが付いていて、人に見られたくないものはここにしまうなど。ちょっと野暮ったくなってしまうデザインにならないように、機能性とデザインのせめぎ合いを縫製工場さんと話し合っています。後は、あまり金属パーツを使わないことや、できるだけ縫い合わせにこだわること、結びデザインにする、というような昔から使っている手法だけれど、色褪せないようなデザインを企画の中に込めていきたいと思っています。

梶原:これらのデザインがなぜ生まれてきたのか、段々とわかってきました。お客様からの声で印象に残っている内容がありますか?

磯部さん: CRAHUGでも売れている1024番の横型のショルダーバッグのデザインは、実は妻が子育て中に使っていたバッグの経験が元になっています。子育てをしている時は子供と手を繋ぐことが多く、外出先でもお財布やハンカチなどを簡単に出しやすいような、コンパクトでもしっかり入るものが欲しいという妻のアイデアをもらって、バッグに落とし込みました。お客様の声も、非常にコンパクトだけど、十分に物が入り使いやすく軽いとおっしゃっていただけます。

梶原:お客様も使いやすさからリピーターと繋がるとき、作り手のやり甲斐が生まれていきますね。そして次への目標も広がると思います。

これからの動きに向けて

梶原:CRAHUGは新宿で開催されたPOPUPやWEBを見て、お声がけさせていただきました。 POPUPをよく開催されていますね。

百貨店POPUP売り場の写真

磯部さん:私が会社にいたときの先輩の営業の方が関係しています。その方は私が退職した2年後くらいにご退職され、その後会社を立ち上げられました。半年に10回ほどPOPUPを行っていらっしゃってそこからご紹介いただきました。

梶原:順調なスタートだったのですね。

磯部さん:そうですね。本当に人に恵まれているというか。作ってくださる方と、それをプロモーションしてくださる方、入口と出口に非常に強いパワーを持った方たちに巡り会えたと感じています。

POPUPを開催してきたご縁の中でCRAHUGの皆さんにも見つけていただいて今に繋がっています。ONWARD CROSSETでご紹介いただいたお陰で自社のホームページの訪問も増えておりますし、非常にありがたく本当にいろんな方に恵まれて、今仕事ができていると感謝しております。

梶原:作り手と使い手の架け橋になれるように運営している CRAHUGとして、嬉しいお言葉です! これから、どんなことに挑戦したいでしょうか?

磯部さん:海外進出に向けての販売をスタートしていきたいと思っています。 以前お世話になった香港の社長さんからも、「今まで中国はものを作る場所だったけれど、これからは日本で作ったものを売る場所になっていくよ」というアドバイスをいただきました。 このブランドも今後のCRAHUGとの協業の中で、ご提案いただく意向ですとかアドバイスに沿って、協力をさせていただきながら共に海外に向けても販路を開拓し、成長していきたいと思っています。

梶原:CRAHUGとも、共によい良い形で今後も成長して行きたいと思っています。 今回の取材では、磯部さんの歩みやハンドバッグ作りの経験を通して、周りにいる人たちにも、バッグを使う人たちにも、相互にハッピーをもたらすような仕事への姿勢が、ブランドの特徴になっていることがわかりました。 これからのHekhèr Le Style de Vieの成長が楽しみです。 沢山のお話を語っていただき、ありがとうございました。

梶原加奈子

Date: 2025.10.21

CRAHUGのクリエイティブディレクター。大好きなテキスタイルに関われる日々に感謝。北海道の自然がクリエーションの源。

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