【梶原加奈子の想いごと】
あなたの好みの
デニムは?
粗野感推しか
綺麗め推しか、
デニムの豆知識と共に
考えよう。

暑い日々が続くなか、世界的にリゾート&リラックスに消費者の関心が向かっていますね。私は海外に日本の生地や製品を販売する仕事をしていますが、最近は日本のデニムに益々関心が高まり、国内のデニム生産に関わる工場さんはどこも大忙し。私もデニム素材に特化したテキスタイルコレクションを作ることになり、最近は岡山や福山産地に出向き、技術を学ぶ機会が増えています。

1つ、驚いたことは、デニムの色染め現場のこと。 最終的に出来る色を想定して、全然違う色のバケツに入れながら製品染め加工をしていました。職人さんは経験を通して、色合いを調整出来るそうです。色や風合いを見極める目や感覚がすごいですね。

福山産地 デニムの製品染めと製品洗い工場

好きなものを深く知り、さらに好きになる。

デニムを作ることが好きな人、履くことが好きな人は、モノづくりのこだわりの延長上にいて続いていく面白さがありますね。生地の特性を詳しく知ることで、さらにデニム選びが楽しくなるのではないでしょうか。 例えば、シャトル織機を使った粗野感が際立つデニムとリジッドデニムを使った綺麗めなデニム。どんな風に出来ているのか、織物や加工の豆知識を知ることで特徴の背景が掴めますよ。

福山産地 シャトル織機

セルビッチデニムの特徴とは

シャトル織機のデニムは、ヨコ糸は糸をまいたボビンを搭載したシャトルと呼ばれる器具を使い、糸を左右交互に通していく構造の織機を使ったセルビッチデニムのことです。 人間が手足を使って織る手織りと同じ方法で動いており、調整する人によって仕上がりが異なるので手織りに近い粗野感がでます。また、織るスピードが遅いため、タテ糸とヨコ糸のテンションにバラつきが出ます。糸につける糊の量も少なく糸の張力も弱いため糸の屈曲が深くなり、通常の織機で生産するデニムと比べて表面に凹凸が出ます。この凹凸が表面に影をつくり、ユーズド加工、ダメージ加工などを施すことで「アタリ」が出やすく、立体的なヴィンテージ感がある風合いを作り出します。

この独特なムラと膨らみ感があるセルビッチデニムは、生産が日本でしかできないため世界からも人気が高いです。

リジッドデニムの特徴とは

一方で、リジッドデニムは 綺麗めな見え方が特徴となります。 リジッド(Rigid)とは、「固い、硬直した」と言う意味です。洗い加工がされていない状態のデニムのことで、水洗いを含めた加工が一切施されていないデニムのことです。生デニムやノンウォッシュと呼ばれてもいます。

福山産地 レピア織機

綺麗めなリジッドデニムは最新のコンピュータ制御された革新織機で作られていることが多く、風圧や水圧でヨコ糸を飛ばして高速で織ります。そのため準備工程で糸に付ける糊の量が多く、製織時にかける糸の張力も強いです。織り上げた生地の表面は均一で硬くパキパキとしています。

洗い加工を施す事で初めて糊が落ちて生地が柔らかくなり穿きやすい状態になりますが、リジッドデニムにこだわる人は、出来るだけ洗わないで糊付きの状態でしばらく履いて、洗濯の仕方にもこだわり、自分だけの風合いや色落ちが育っていくことを楽しめます。さらに、このリジッドデニムにシルケット加工をかけると、より洗練した高級感がある見え感になります。

シルケット加工で高級感をプラス

シルケット加工とは、綿に苛性ソーダ(水酸化ナトリウム水溶液)を使い、シルクの様な滑らかな光沢を持たせる加工方法です。 綿の生機(無加工の織りあがり素材)を引っ張りながら苛性ソーダに浸すことで綿繊維が膨らみ、平べったい断面が滑らかに膨らんだ断面となり光沢感が増します。さらに、引っ張りながら加工することでフラットな張りのある生地になります。その後、酸により中和することで安全な中性状態に戻します。

シルケット加工をすることで、生地強度をはじめ寸法安定性、吸湿性、染色性を高めます。洗っても縮みにくくなり、インディゴに赤みがかかることで濃色に深みが出るため、タテ糸とヨコ糸のコントラストが少なくなり、粗野感のないフラットなユーズド加工が表現できます。女性らしい高級感デニムとして、近年はシルケット加工を加えたリジッドデニムに注目が当たっています。

CHAUGでご紹介している〈woadblue〉さんのワイドテーパードパンツのデニムは、シルケット加工されたリジッドデニムを使用しています。 ネップ感のあるヴィンテージ調デニム地をベースに、シルケット加工とワンウォッシュを施す事で、光沢感があり柔らかい生地感に加工しています。濃紺の綺麗な生地に仕上がっているので、ジャケットなどのきれいめスタイリングとの相性抜群です。

お気に入りにはお手入れにもこだわりを。

リジッドデニムにしかない張り感や、濃紺の色合いが好きな方も多いです。できる限りジーンズを洗わずにはき続け、初回洗いはドライクリーニングで縮みや色落ちを抑えることもお勧めです。

2回目以降の洗濯には、濃色製品用洗剤を少量混ぜた水にジーンズを1時間程浸けておき、「ドライ(おしゃれ着洗い)」メニューを選択し、脱水は行わない。干す際にはバスタオルに包む事で直射日光による変色を防ぐ。などなど、リジッドデニムはお手入れにこだわっている愛用者も多いですよね。

素材のこだわりポイントを知ることで、デニム選びの目利きとなり、自分好みのデザインに育てていく楽しさを味わって頂きたいです。

Text & Photo:
梶原加奈子

CRAHUGのクリエイティブディレクター。大好きなテキスタイルに関われる日々に感謝。北海道の自然がクリエーションの源。

Date: 2023.09.06

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