モノづくりの町から”可愛い”を届ける
エップヤーン有限会社

お店に並んでいるセーターを見て、あなたは何を思いますか?「可愛い」、「高い」、「欲しい」と思う人がほとんどで、そのセーターがどんな糸から出来ているのか考えている人は少ないかと思います。糸のことだけを考え、糸を作る。モノづくりが日常に溶け込んでいる町、東大阪に工場のあるエップヤーン有限会社に取材に伺いました。きれいな糸が出来上がる工程を見ていると、セーターにしなくても、それだけでいいのではと思えるほどでした。今回は〈エップヤーン雑貨店〉を担当する吉備さんと谷さんに案内していただきました。

(左):吉備さん (右):谷さん

ーまず最初に。会社の創業は何年ですか?

【吉備】会社自体は2000年の8月からです。自社に機械を置いたのは2013年の4月からになります。

ーどういったきっかけで自社に機械を?

【吉備】外部の協力工場さんが続々と閉めている状況もあったので、自社で加工できる小口の機械を導入しました。大口は協力工場さんに、小口のものは自社で加工するようにしています。

ーどのようなものを作ることから始まったのですか?

【吉備】工業用ニット糸ですね。

ーほかの撚糸工場との違いってありますか?

【吉備】とにかく試験をきっちり行い、リネンの斜行(しゃこう)を止めて納品するという事にはこだわりを持っています。

ー斜行...?

【吉備】ニットはパーツごとに編むと思うんですけど、斜行している糸で編んだパーツはゆがんでしまうんですね。右にいったり、左にいったり。そのままだとパーツごとがうまく合わなくなってしまうんです。きちっときれいに編み下ろせるような糸を納品することにこだわりを持ってモノづくりをしています。

ーそれって難しいことなんですか?

【吉備】試験さえすれば難しくはないです。ただそれをちゃんとやっているところは少ないと思います。

ーそういう地道な積み重ねが今につながるんですね。工場はここ東大阪以外にもあるんですか?

【吉備】弊社の工場はここだけです。あとは愛知県にも協力工場はあります。

ーそんな東大阪について、産地や地域の特徴について教えてください。

【吉備】東大阪は工場の町です。プラスチックや金属の加工が得意なんですけど、昔は河内木綿の産地だったみたいで、元々は繊維の加工所も沢山あったみたいです。

ー確かに周りを見渡しても工場だらけですね。

【吉備】そうなんです。金属やプラスチックの加工工場は沢山あるんですが、繊維関係はほとんどなくなってしまいましたね。

ーそんな背景があったんですね。そのような中、工場を継続させていくために挑戦していることってありますか?

【吉備】自社ブランドを立ち上げたことがそれにあたるかなと。Tシャツのブランド〈東大阪繊維研究所〉と手芸糸・クラフト糸を販売するために〈エップヤーン雑貨店〉の2つのブランドを設立しました。

ーブランド作りにつながっていくんですね。ここからはそんな〈エップヤーン雑貨店〉について伺っていきたいと思います。商品はどのような原料を用いて作られていますか?

【吉備】原料はリネンが主で、それに綿やシルクを合わせて糸を作っています。リネンの糸を中心に展開しています。

ーリネンの糸ってどういう特徴があるのですか?

【吉備】吸水速乾に優れていて、光沢もあり、冬でも案外暖かいんですよ。リネンって春夏のイメージあると思うのですが、度目をぐっと詰めて厚手に編むと冬も使えるくらいの暖かさになります。そういった意味ではオールシーズン使えるような万能な素材ですね。

ー知らなかったです!なんでリネンという素材にこだわってモノづくりをしているのですか?

【吉備】なんでなんでしょう?(笑)リネンの斜行を止めるのは、すごく難しくて技術がいることなんですよ。それを突き詰めると良いのではないかという社長の想いがあると思うんですけど。

ーではそんな〈エップヤーン雑貨店〉のブランドのコンセプトについて教えてください。

【吉備】ブランドのテーマは「可愛いは楽しい」です。編み物に使ったり、ラッピングに使ったり、いろんな使い方で楽しんでもらえるような商品を製造しています。

ーカラフルな糸ばかりで確かに可愛いですね。カラーはどのように決めてるんですか?

【吉備】基本は二人で考えているんですが、最近は谷さんが中心になって考えてくれてます。

【谷】色を決めるのは、ひたすら可愛いっぽい糸と糸を混ぜて作っていく作業になります。誰に合うのか、何歳くらいの人に提案しようというのを考えてから作っていきます。

ー気の遠くなるような作業ですね。それって組み合わせ沢山ありますよね?

【吉備】無限です、最初は楽しいよね(笑)。

【谷】色が増えていけばいくほどしんどくなっていきますね(笑)。

ーそんなお二人のおすすめ商品について教えてください。

【吉備】Monetが一番思い入れが強いかな。最初に作った商品なので。リネン100%の糸で、何度も色だしを行い、あのセットを作り上げました。1本の糸を作るのに、9色の糸を混ぜ込んでいるので、奥行きがあるような、ほかの手芸糸では出せないような味があると思っています。置いてあるだけでも可愛くて一番のおすすめです。

ー確かにこんな糸他では見たことないですね...。モノづくりをしていてどんな時に喜びを感じますか?

【吉備】思った通りに出来上がった時が一番嬉しいですね。自分の想像通りの色合いで、きれいな色が出来ると感動します。二人で可愛いねって言いながら作ってます(笑)。

ー二人とも本当に楽しそうに働かれてますね。では、最後に今後の展望について教えてください。

【吉備】会社としては、人数も増えて大きくなればいいなと思います。「目指せ、自社ビル工場」を当面の目標として掲げています(笑)。ブランドとしては、糸だけではなく、編み物キットとして販売していきたいと考えています。当初は糸屋だから糸を、という発想もありましたが、お客さんにとっても、編み棒と糸がセットになっているものがあればいいのかなと思っていて。どういうものがいいのか、今ちょうど探しているところです。お客さんに〈エップヤーン雑貨店〉の糸を楽しんでもらえるように頑張ります。

  • エップヤーン有限会社

    エップヤーン有限会社

    エップヤーン有限会社は、より良いニット糸の素材追求とその提供のために2000年8月発足しました。EPP YARN=エップヤーンという社名は WE ENJOY TO PURSUIT PROCESSED YARN (糸加工の追求を楽しむ)という言葉に由来しています。お客様にとってより面白く、より満足していただける素材をご提供しようというテーマで、自分たち自身も楽しみながら日夜研究・開発を重ねています。当社では実際に本生産の現場で用いられているものと同じ試験撚糸機、いくつかのゲージの編み機、ワインダー等サンプル糸を作るための一連の機材をそろえ、お客様のニーズに迅速に対応出来るように、また常に新しい素材を作り出せるようにしています。

Text & Photo:
宮﨑涼司

人一倍、服が好きなCRAHUGのジャーナル担当。給料のほとんどをファッションへ投資する。好きなメディアは「AWW MAGAZINE」と「NEUT MAGAZINE」

Date: 2021.11.19

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