先日、お世話になった方にお礼のメッセージカードを書きました。最近は、LINEなんかでサクッとお祝いのメッセージも送ることができますが、たまに書く手紙もいいものです。汚い字も綺麗な字も、一筆入魂して書かれた言葉たちに心が温まった経験がある方も多いのではないでしょうか。

“ペーパーレス”

最近よく聞きますよね。デジタル化と環境保全の視点から推進されている取り組みですが、古紙としてごみに出された紙についてはリサイクルして再生紙として生まれ変わることができます。もちろんリサイクルできない紙もありますが、実は古紙って貴重な資源でもあるんです。

今回は、そんな紙と再生にまつわるブランド<crep>を展開する、山陽製紙株式会社の皆さんにお話を聞いてきました。

主に現場を管理されている、製造マネージャーの池宮さん

―創業何年ですか?当初はどんなものを製造されていただのでしょうか? 【池宮】94周年を迎えたところです。創業当初からクレープ紙の製造をしていました。シワのない工業用の紙を作って、引っ張っても切れないような強度のある紙を技術を積み重ねながら改良していきました。それが、しわをつけることでより破れることがなくなってできたのが現在のクレープ紙です。

―工場のある地域の特徴は? 【池宮】製紙会社は川や海の近くにあり、水をくみ上げて製紙します。弊社も近くを流れる男里川(おのさとがわ)の伏流水という、川からしみ込んだ地下にある水を汲み上げて使っています。

―どういった工程で製造していますか? 【池宮】工程はすごい単純です。手漉きと同様で、円網抄紙機っていう機械で水と原料を抄きながらシワを付けて一枚のシート状にします。そして、濡れた紙を丸型の鉄板ドライヤーで乾かしていきます。

―工場独自の技術を教えてください。 【池宮】古紙を原料とする一次クレープ紙を少ロット・多品種で生産している点ですね。海外の大量生産品には勝てないので、様々な要望に合わせた生産をすることで、ニッチなところに攻めています。 【川端】 二次クレープを作る会社はいっぱいあるんですが、一次クレープの製造は国内では弊社だけになりました。 【池宮】クレープ紙のシワなどはもちろん自慢の技術だけど、何よりも大変なのは少ロット・多品種で製造すること。そして、将来的には、「書く、張る、敷く」という概念を覆すようなものを用途開発したいのが理想です。

―一番難しいこだわりのポイント 【池宮】シワの形状です。何よりもシワが命。いかにぶれずに、コントロールするかが難しいポイントです。同じように毎日できれば楽ですが、古紙に入っている成分や抄造環境の影響(季節,気温など)などにより毎回違います。ロスになったものは再利用という形で原料に戻すこともできますが、製造したときの人件費やガス、電気、水は無駄になってしまいます。

―一番大変だったことは? 【池宮】少ロットって言いましたが、機械は24時間稼働しています。生産性が悪いのに機械を止めるとさらに悪くなってしまうので、日々機械を止めないために目を行き届かせないといけません。それが大変です(泣)

―喜びを感じるのはどんな場面ですか? 【池宮】品質が安定しづらい中で、自分の思うクオリティーでうまく仕上がって、それをお客さんに喜んでもらえたときに一番やりがいを感じます。お金には代えられない気持ちですね。

環境に貢献するものづくりを

―ファクトリーブランド<crep>を始めた経緯は? 【川端】工業用の紙の製造では、切れ端、端材が出てきます。それを他のものに使えないか?それを一般向けに販売したいと始まったのが<crep>でした。

企画開発部の川端さん

―なぜ一般消費者向けに? 【川端】「クレープ紙」と言われると一般の方はほとんど知らない。それをもっと一般の方へも知ってもらおうという気持ちがありました。

―紙を活用したレジャーシート。着想は? 【川端】「山陽プロダクトアワード」という社員から商品開発のアイデアを出すイベントから出てきました。初めは「御座シート」というネーミングで販売しましたが、なかなか売れず…デザイナーさんのアイデアでデザインも一新し、ネーミングも「ピクニックラグ」に落ち着きました。出来上がるまで、企画開発部だけでなく全社体制で取り組んだのが<crep>です。

―社員一丸となってできたブランドだったのですね。新たに挑戦していることはありますか? 【池宮】電線や鉄の包装に使う工業用の紙を作っていますが、<crep>のように工業用以外の用途開発もしていきたいです。あとは、環境面でペーパーレスの潮流が来ていますが、学校や自治体などのコピー用紙などを集めて、再生紙にしてお客さんに戻していきたい。環境経営*を目指しているので、燃やしてCO2を発生させるのではなく、生まれ変わらせて環境負荷を減らしていきたいという思いがあります。

【川端】他社ともコラボして新しいものを生まれさせることも今後やっていく予定です。これまでに、梅の種を炭にして紙に混ぜて作る紙だったり、甲子園の芝を刈ったものを紙にしたことがあります。

―紙以外を活用した再生紙というのも半永久的に再生し続けられるんですか? 【池宮】そうです。想像がつきづらいと思うんですが、紙には色々混ぜることができて、コーヒー豆の滓やお札を混ぜて再生紙に生まれ変わらせたこともありました。

原料となる古紙の一部

―確かに御社のHPでもSDGsへの取り組みが大きく出ていましたが、そういった環境への配慮がかなりされているんですね。 【池宮】製紙会社はとても環境負荷が大きいと考えています。たくさん水も使うし、電気もガスも。作るのにすごい資源を使っています。その使った資源を財産として守り、再生するのが使命、それが経営理念にも含まれているんです。

ー今後、さらなるSDGsへの取り組みはありますか? 【池宮】重視している目標はつかう責任・つくる責任の部分です。紙として再利用していくための取り組みを増やしていきたいです。工場からの排水もきれいな水で流すことは絶対に守っていきます。 【川端】実際に排水処理設備を使って、最後には魚も住めるくらいきれいな水にして川に還しています。

  • 山陽製紙株式会社

    山陽製紙株式会社

    山陽製紙は創業以来、紙と共に歩んできた再生紙のスペシャリスト集団です。地球温暖化が進む中で、サスティナブル社会形成への機運は一層高まってきました。環境のみならず、様々な社会的な課題に真摯に向き合い、自社の特徴を活かしながら解決のために挑戦する企業のお役に立ちたいと考えています。

Text & Photo:
上野結佳

計5名の甥っ子&姪っ子を溺愛する、CRAHUG・SNS担当。写真は甥っ子へ作った誕生日ケーキ。

Date: 2022.08.02

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