【梶原加奈子の想いごと対談】
土に還る糸で編んだ
柔らかな肌ざわりと心地よい着心地
NETENE.のニットウエア

大阪府の泉大津産地で1969年に糸販売から創業し、現在ニット工場も運営している澤田株式会社のサステブルなニットウエアブランド〈NETENE.〉からブランドマネージャーの三浦健太さんとブランドディレクターの竹内昌子さんにお話を伺いました。
サステナブルな時代に向けて、糸から開発
梶原:澤田株式会社さんはニット糸の販売でとてもご活躍ですよね。私もニットを企画する時は御社の糸を使っています。サステナブルへの意識も高い印象があります。

澤田株式会社の大阪本社に展示されている様々な意匠糸
三浦さん:弊社は大阪の泉大津で地元の糸商社としてスタートしました。糸の販売営業をする中で提案しやすいように編地等もつくってきたことで、ニット製品づくりに対しても少しずつノウハウを蓄積してきました。15年ほど前から〈ADAWAS〉など自社アパレルブランドを始め、ここ数年では〈NETENE.〉、ゴルフブランド〈PERFECT TAN〉などをスタートさせ、徐々に自社製品ブランドに力を入れています。

澤田株式会社の大阪本社近くの自社工場 ホールガーメントニット機が揃っている
梶原:澤田さんは自社ブランドを国内外の卸や自社オンラインでも販売し、時代に合わせて柔軟に多角的に事業が発展していますよね。
〈NETENE.〉はブランドディレクターの竹内昌子さんと立ち上げたブランドだと伺っています。澤田さんの糸の展示会に行ったとき、初めて知りました。ニットウエアのクオリティーの高さや心地よい素材のタッチに惹かれました。素敵な商品を生み出す竹内さんにもお会いしたいと思っていましたので、今回はお話しできる機会となり嬉しいです。竹内さんの歩んできた道のりとブランド立ち上げの経緯を是非お聞かせ頂けますか?
竹内さん: 前職では国内のレディースカジュアルブランドで麻シルクや天然素材を使った服づくりに携わってきました。十年ほど前になりますがNYに出張する機会があり、「ウェルネス=健康」という言葉を初めて知り、それ以降ウェルネスをライフスタイルやファッションの中に組み込むことを自分自身すごく意識するようになりました。NYの街を歩いていてもラグジュアリーブランドしか並んでいなかった5番街にスポーツブランドやヨガウェブランドが並び始めていて、レギンス一枚で歩く人たちの姿を見かけました。ああ、これからはそういう時代になっていくんだなと感じました。
その後日本に帰国し、ヨガウェアとワンマイルウェアを兼ねたブランドの立ち上げを経験し、より快適な着心地を追求したいと思うようになりました。そして2019年に独立し、ウェルネスを意識したライフスタイルを更に模索するため、再びNYに住み学んでいたところ、以前から糸でお世話になっていた澤田さんが素材の展示会に出展していたので、訪ねてみました。
そこで〈エコフィール〉という土に生分解する糸が新しく出来たことを知り、この糸を使った製品ブランドを立ち上げる構想を伺いました。何かお手伝いできることがあれば、、という気持ちから関わり、インナーウェアの開発を手伝うことになりましたが、それが〈NETENE.〉をスタートするきっかけに繋がりました。

土に生分解性する糸<エコフィール>でつくられたNETENE.オリジナルニット素材 ランダムリブニットタンクトップ ¥7,700
梶原:ウェルネスやサステナブルなウエアへの挑戦ですが、どのように企画や開発が進んでいったのですか?
竹内さん: 私がブランド構想のプレゼンをさせていただき、澤田さんのコアバリューであった「世界一のニットカンパニー」に付随して「世界に発信していく」、「ユニークなものづくり」そして「ウェルネス」も掲げた〈NETENE.〉と言うブランドをつくりませんか?と提案させていただきました。開発は打ち合わせをウェブ会議でしながら、日本に帰国しその後一年かけてやっとこだわりの生地をつくることができました。
梶原:澤田さんは竹内さんの提案を受けた時どんな反応をされたのですか?
三浦さん:私たちも新しい成長分野として自社ブランドを立ち上げたいという思いはあったのですが、「ウェルネス」や「サステイナブル」の分野はまだまだ開拓できていなかったので自分たちで立ち上げるノウハウや力がまだなかったのですが、竹内さんに出会ってプレゼン内容に共感し〈NETENE.〉を立ち上げることになりました。
妥協しないブランドイメージとヴィジュアル
梶原:〈NETENE.〉の最初の印象は、すごく写真が素敵だなあと思いました。ブランドの世界観を表現するイメージにすごくこだわったのでしょうか?
竹内さん: 前職でルック撮影などアートディレクション的な仕事もしていたので写真にはとてもこだわりました。場所もモデルもこだわって撮影したいとか、SNS用に生分解するTシャツが土に還っていく様子をコマ撮りしたいなど、澤田さんには色々と無理を言わせてもらいました。

最初のシーズンのブランド世界観を表現する写真

生分解する糸で作ったTシャツが土に還っていく様子
梶原:これまでファクトリーブランドの立ち上げを沢山見てきましたが、最初からヴィジュアルイメージに力を入れるのは予算的に難しい場合が多いので、澤田さんは協力的だった様子を感じます。
竹内さん:澤田社長もすごく前向きでむしろ前のめりくらいでした(笑)そんな社長の元、スタッフの皆さんと一緒に限られた経費の中で最大限のコストパフォーマンスを出すことが私の仕事だと感じました。結果的に上手く進んだのは、ECの特性を把握して、それに賛同して一緒にやってくれたチームの力があったからだと思います。
このウエアを着てくれる人が幸せであってほしい
梶原:〈NETENE.〉というブランド名も特徴的で素敵ですね。意味合いを伺えますか?
竹内さん:そのままなんですけど、「着て寝れるよ」という意味で(笑)。ストレートに寝てねという感じなんですけど、ウェルネスとかライフスタイルをもちろん意識しましたが、一番はこのウエアを着てくれる人が幸せであってほしいということを想像しながらブランド名を考えました。あとは、覚えやすいように、長すぎず反復する音程リズムを意識したりし、トータルで〈NETENE.〉にしました。
梶原:響きがとても親しみやすく、すぐに覚えました(笑)。商品についても伺いたいのですが、特徴とこだわりのポイントを教えて頂きたいです。
竹内さん:着心地が良いものを作ることに一番こだわりました。私自身アレルギーを持っていて、ゴムで肌が痒くなりやすいため、家に帰ったらすぐに着替えたいタイプです。 そのためインナー選びはすごく苦労したんですね。だから同じように悩みがある人の解決をしたいと思って、この糸を選びました。カシミヤじゃないのにすごくカシミアタッチで柔らかく、しかも家で洗えるんです。やっぱりインナーは毎日使うものなので、洗濯機で洗えるものを作りたいと考えていました。あと〈NETENE.〉は出来るだけゴムを使わないようにしています。
肌からの快適さを大切にする素材や色
梶原:竹内さんの実体験を元に考えられているんですね。インナーにストレッチ糸を極力使っていないことも驚きです。素材や色についてのこだわりも伺いたいです。
竹内さん:〈NETENE.〉のオリジナル素材〈エシカルフィール〉はコットンキュプラを使用しています。糸の断面が円に近いため、肌への刺激が少なくデリケートな肌も傷つけにくいなめらかな肌触りです。湿気を吸ってはきだす、吸放湿性にも優れすばやく湿気を吸い取りはきだし服と肌のあいだのムレやベタ付きを抑えさわやかな着心地が続くので、年中快適に着用できるんです。
カラーは自然界からとったナチュラル(コットン)、オリーブ(植物)、アンバー(鉱物)、 ディープシー(深海)の4色で展開しています。また25AWでは新色「ピンクソルト」が登場しました。

NETENE.のオリジナル素材「エシカルフィール」

*新色「ピンクソルト」が加わる レッグウォーマー ¥4,950
梶原:癒し感のある素敵なカラー展開です。これらの色を繰り返し使っていますよね?このカラーを見ると〈NETENE.〉をすぐイメージできます。
竹内さん:そうですね。定番の4色は各アイテムに使っていて、ナチュラルは軽く心地よい着心地、オリーブは森林にいるような落ち着き、アンバーは体で温かみを感じるオレンジ系、ディープシーは深い海で静かな深い眠りをサポートするようなイメージで作られています。 色は肌でも吸収して感じ取り温感があります。私たちが身にまとうものが温活に重要で、例えば寝るときに黒やグレーのスウェットを着ると体が冷えやすかったり、私自身よく着古した服をパジャマにすることがありますが、疲れが取れないことを実感しました。だから、パジャマはきちんとしたものに替えて、リラックスして疲れを取ることが大切だと思っています。寝るときは是非、〈NETENE.〉に着替えてほしいです。
梶原:色や素材が心身に影響を与えていますね。今までの人気商品で、これはもう絶対。と思うのは、どの商品でしょうか?
竹内さん:今までの人気商品だと、先ほどの「ブラフレンドリー」と「ウォームパンツ」があります。「ブラフレンドリー」はブラなんですけど、リラックス感が欲しいと思い、ゴムの締め付けをなくし、リブだけで支えるデザインにして、胃腸を冷やさないようにちょっと丈を長くしています。
竹内さん:無縫製のホールガーメントで編んでいますが、ブラパットのカップ部分だけは出し入れできるようにカットして縫製しています。「ウォームパンツ」は腹巻とインナーパンツが一体化したパンツで、ボディーのサイドがリブになっていて、お腹周りはかさばりたくないので、編み方を変えています。 ウエスト部分のゴムを包まずにしたのでストレッチのぴったり感はすごく良いのですけど、逆にちょっと居心地感が苦しい時もあるので、わざと後ろにスリットを入れています。ピタッとするけど、体の動きに沿う作りになっています。
梶原:両方とも窮屈さがなさそうで、長時間着ていても体に負担がなさそうですね。あと、価格もすごく手に取りやすいなと思います。
三浦さん:インナーウェアのB to Cブランドということで、お客様が買い換えやすい価格設定にしています。ファクトリーブランドだからこそ出来ることでもあります。
お客様と一緒にものづくりをする
梶原:お客様と直接繋がることで変化ややりがいを感じることはありますか?
三浦さん:年2回ずつぐらいは百貨店さんでポップアップはやらせていただいていて、それ以外でも商談会などに参加させていただいています。基本的にECでしか販売してないので、ポップアップの機会にできるだけ多くのお客様に手に取って見ていただき生の声を伺っています。「ブラフレンドリー」に関しては最初ワンサイズ展開だったんですけど、サイズをもっと調整してほしいというお客様のご意見から、スリーサイズ展開に増やすことになりました。
竹内さん:「ウォームパンツ」はお客様からの要望もあり、去年太もも周りをもうちょっとカバーできる「ロングウォームパンツ」もつくりました。
三浦さん:私は糸の営業担当でずっとBtoBをやってきたので、実際に糸を使ってくださるお客様と直接関わる機会がなかったのですが、〈NETENE.〉ではお客様からリピートしているなど声をかけて頂くことやSNSやECのレビューなどにメッセージも頂けるので、企画の参考になります。やっぱりやっていて良かったなと感じます。〈NETENE.〉を通してお客様と一緒にものづくりしていく感覚をこれからも大切にしたいと思っています。
NETENE.のこれから
梶原:立ち上げから自社ECモールでの販売を中心に販売していた印象ですが、CRAHUGに参加して頂いた理由を教えていただけますか?
三浦さん:最初は自社オンラインに絞って販売していましたが、もっと多くの方に出会い、商品を知って頂きたいと思っていた時期に、CRAHUGさんからお声を掛けて頂きました。ファクトリーブランドにフォーカスした商品を多くのお客様に訴求されているのがすごく魅力的だと思っていました。
梶原:同じ想いをもとに関わることが出来て嬉しいです。これからの〈NETENE.〉の動きで、こんなものをつくっていますよとか、こんな取り組みをしていきたいと考えていることはありますか?
三浦さん:最初はインナーやルームウエアを中心に販売していたんですけど、店頭でお客さんの声を聞くと、旅行に持っていきたいとか、飛行機で着たい、一枚で過ごせるところがいいねというお声をいただいて、もっとワンマイルウェア(家から1マイル(1.6km)範囲の外出時に着る着こなし、いわゆる「ご近所コーデ」のこと)を増やしたいと考えています。
竹内さん:私は自分が出産した際に〈NETENE.〉はマタニティでも使えるウェアだなと思いました。妊娠していた時からずっと〈NETENE.〉に頼ってきて、出産後に使えなくなるマタニティーウェアは自分も着たくなかったので、極力〈NETENE.〉みたいにゴムがなくてストレッチで伸び縮みするアイテムは着ていて良かったと思うので、体型が変わっても使える良さをもっと伝えていきたいと思っています。
梶原:〈NETENE.〉は竹内さんの実体験から企画が始まり育っていくのが素敵ですね。
竹内さん:日常でのちょっとした気づきや悩みから始まっていると思います。同じような悩みの人が集まってくるみたいな。身近に感じていただけるとうれしいです。
こだわりを発信し、選択肢を増やすサステイナブルを目指す
梶原:最後に、〈NETENE.〉の未来への想いと共に、日本のものづくりの現状や今後について思うことを伺えますか?
竹内さん:まず一つは、日本の産地の生産背景を守るために〈NETENE.〉の生産を継続していきたいと思います。そしてサステナブルというのはモノだけでなく、持続可能な世の中になるための選択肢を増やすことも大事だと思います。着心地の良さから選ばれた〈NETENE.〉のウェアはサステナブルな糸で作られ、それを購入することは人手不足などで継続が危ぶまれる工場への支援にも繋がります。〈NETENE.〉を通して社会を循環させていく選択肢を増やしたいと思っています。
もう一つは海外にいると、メイドインジャパンの品質が高いという共通認識を感じます。生産過程でこだわりがあるからこそ、その技術の高さや繊細さをもっと世界に広め、信頼を得ていくことが服づくりに関わる私たちの目標なので、海外への発信も積極的にできるように頑張っていきたいです。
梶原:〈NETENE.〉もCRAHUGと同じく日本のものづくりに対して貢献したいという熱い想いがあることを改めて確認できて、竹内さんと三浦さんの志に益々共感します。
今回のインタビューを通して、商品の背景がすごく理解できました。だからこの素材で、この形なんだという事が1つ1つ納得です。竹内さんや三浦さんの考えを伝えていくことで、ファッションだけでなく社会に対してのお客様の意識も高まっていくと思います。今回は様々なこだわりや想いをお話し頂き、本当にありがとうございました。

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