CRAHUGがスタートしてから出会った工場さんが増えてきましたが、益々これからの日本は製造工場が企画から製品販売まで関わり、お客様に届けていくD to Cの流れが増えていくのだろうと感じます。

産地で仕事する皆さんとお話ししていると、最近は人手不足問題の話題になります。そもそも若い世代の働き手が地方では減ってきている上に、2020年以降はコロナの影響もあり日本で仕事をしていた海外の方達が帰国し、人手不足が加速している状況が続いています。 働き手がいなければ工場のキャパも少なくなり、納期もかかり、計画的に生産を受けられない中で廃業を検討する工場も増えていくだろうと思います。日本は分業でものづくりしている工場も多いので、1つの工程を作る工場がなくなると、同じものを品質高く作ることが難しくなります。発注をする人たちからすると、早く生産して納品して欲しいと思いますが、工場の人手不足の問題に耳を傾け、現状に合わせて生産の時間を十分に取ることが日本のものづくりを守ることに繋がる一歩だと思います。

今後の継続を考えている工場さんは、デジタルにおける効率化を検討することや一貫でものづくりできる工場設備に投資することなどを始めています。また、自社の設備を活かしたものづくりを継続していくために、その領域を広げて製品販売まで新事業を始める工場さんも増えています。地方自治体の展示会や合同展示会の出展まで辿り着けても、その後軌道に乗せるマーケティングや販売が課題となり、初期の立ち上げの想いを継続して事業化させていくことが出来ない企業さんの悩みも沢山聞いてきました。

オリジナルブランドの開発が増えていますが、既存ブランドが溢れており競合が激しいマーケットで実績を残すのは簡単ではありません。クリエイション以外にも、営業や販売、販促の機能を鍛えていく必要があり、ECやSNSなどデジタル戦略も欠かせない時代です。

「ブランドを作る」ことは、ネームを付けたり、好きなものを自由に表現することだけではなく、ブランドを運営する工場の人たちが新たな知識と経験を磨いていくことが重要です。その結果、お客様に価値を提供し続けることが出来るようになり「ブランド」が成立していきます。最初からブランドとして存在することを焦らず、まずは経験を積んで試行錯誤する時間を経て、事業運営できる人材を育てていくこと。そこに未来のチャンスがあると思ってもらいたいと、私は様々な工場さんにアドバイスをしています。

そんななかで、秋田の縫製工場さんから一本の連絡がありました。

縫製自体の発注は安定しているそうですが、今後の未来に向けて秋田からも新しいことに挑戦できるという発信をしていきたいと株式会社SH.K.PRODUCTの加藤社長からお話しを伺い、CRAHUGと一緒にブランドを作っていくことになりました。 奥様の加藤祥子さんがディレクターとなり、実体験から感じている30代の女性の気持ちの変化をサポートできる服を求めていました。「どのような場所でも、どのようなスタイルでも、女性が美しく見える服を作りたい。」という視点で問題点を解決していく商品開発の糸口が見えていたのが印象的です。その意思を引き出しフォーカスすることからデザインが始まり、〈aiile〉が構築されていきました。

このように、商品から得られる「効果」「利益」「恩恵」「便益」が想定できるかどうかによって、事業の第一歩が始まります。 秋田の縫製工場には地元に住むベテラン職人さんたちがいて、特にシャツの繊細な縫製に経験を積んでいました。安定した人材がいること。シャツ作りが得意なこと。それが強みとして明確にあったため、女性向けのシャツワンピースに特化して商品を構成していきました。

まずはウエストが調整できるようにゆとりあるパターンにしつつ、紐を付けて絞ることが出来る。そして、シルエットを細身に美しく見せるために肩は少しだけゆとりを持たせるけどジャストサイズを意識する。滑らかに落ち感が良い素材を使っているけどイージーケアで洗濯しやすい。デザインは女性を意識しつつも細部に男性の服の仕様を取り入れて、少しクールにまとめる。そんな〈aiile〉のスタイルを構築していきました。

SH.K.PRODUCTさんには、元々の技術の強さがあり、作っていきたい商品のターゲットや目的ベネフィットもあり、それを CRAHUG 企画チームと6ヶ月間話し合いながらブランディングや服にしていくことで仕上がった商品は、今年の9月から MAKUAKE で販売を開始し、予定していた在庫数量は全て完売。次に ONWARD CROSSET でも販売を開始し、現在順調に様々なお客様に購入頂いています。

〈aiile〉は製品ブランドとしてスタートしたばかりですが、これから運営の経験を積んで人が育っていく時間が始まります。女性が自分らしく自由に美しく羽ばたけるシャツワンピースとしてこれから活躍していけるように、そして工場の未来の可能性が広がっていけるように。両方の使命を持って継続できるよう、 CRAHUG も応援をしていきたいと思います。

  • 株式会社SH.K.PRODUCT

    株式会社SH.K.PRODUCT

    秋田県北部の豊かな自然に囲まれた平地に私たちの工場はあります。職人たちは全員地元に住む日本人で、8割が縫製業20年~40年以上のベテランです。私たちは特にシャツの繊細な縫製に経験を積んできました。細かい部分にもゲージを取ってアイロンをかけたり、素材や形ごとに型紙や針目を調整しながら、1mm単位の細部までこだわりを持つ丁寧な縫製が強みです。縫製現場とデザインチームが顔を合わせてコミュニケーションをとり、妥協なく創り上げていくことで、機械だけでは生み出せない人の想いがこもった'aiile'の製品となります。

Text & Photo:
梶原加奈子

CRAHUGのクリエイティブディレクター。大好きなテキスタイルに関われる日々に感謝。北海道の自然がクリエーションの源。

Date: 2022.10.11

この記事をシェアする

CRAHUG編集部・おすすめの記事はこちらです

RECOMMEND