「弁当忘れても傘忘れるな」これは石川県でよく言われている格言だそう。この言葉の通り、石川県では実は一年の半数以上雨が降っているのです。観光客の多い金沢では無料で傘の貸し出しを行っているほど。雨のことを考え雨と共に暮らす、そんな石川県で作られるレインウェアのブランド〈F/ACSION〉。〈F/ACSION〉があれば、弁当を忘れずにすみ雨の日も楽しくしてくれます。つまりは大きな意味でおなかも心も満たしてくれる、そんな懐の広いブランドです。今回は株式会社前垣よりDIRECTORである佐越直樹さんとMERCHANDISERの吉本浩平さんにお話を伺いました。

世界のアウトドアブランドから認められたモノづくり

ー会社は何年創業ですか?

【吉本】1914年創業で、今は106年目です。2014年にはちょうど100周年でした。

ー創業当時はどのようなものを製造することから始まったのですか?

【佐越】今はレインウェアを作っていますが、創業当時は帆布生地に油を塗って水をはじくように加工して、トラックの荷台にかぶせるシートを作っていました。最初からウェアを作っていたわけではなく、当初は産業用品を中心に製造していました。その技術をアパレルの方でも生かせるのではないかと考え、徐々に移行していった流れです。

左:吉本さん 右:佐越さん

ー当時から雨に関わるものを製造されていたのですね。現在工場は何拠点ありますか?

【吉本】石川県白山市に国内工場があり、中国とベトナムにそれぞれ1拠点ずつあります。国内工場では30名ほど、中国、ベトナムの工場では300名ほど働いています。

ーそれぞれの工場で製造している物の違いはありますか?

【吉本】国内工場では公官庁向けのものを製造しています。主に国に卸すようなもので、海外で縫製してはいけないものを扱っています。一方、中国とベトナムの工場はアウトドアブランドのOEM生産を中心に行っています。その中でも中国の工場では、ハイスペックで高い技術を要する商品を扱っています。今回出品する〈F/ACSION〉の商品も中国の工場で製造を行っています。

中国の工場の様子

ー海外の工場ではOEMを多く受けている、との事でしたがどのようなブランドと取り組みがありますか?

【佐越】アウトドアブランドが中心で、一通り国内外の主要なブランドさんとはお取引させていただいています。

ー一通りとは、さすがです!そんな中モノづくりをしていて難しさを感じる場面はありますか?

【佐越】工場側の立場からすると純粋に良いものを作りお客様に提供したいという想いと、取引先の考え方や決まり事との乖離にやりづらさを日々感じています。ブランドさんの意向で、コストの面から仕様を減らしたり、簡易的なものにしたり、もっとこうしたほうがいいのにと思う場面は多々ありました。

〈F/ACISON〉を通じてレインウェアのイメージを一新したい

ーどのようなきっかけで自社ブランドを作ることになったのですか?

【佐越】最初からファッション向けのレインウェアをやろうとスタートしたのではなくて、社内で何か新しいことをやろうとして始まった企画になります。弊社の独自の強みや特色を活かすことが出来るものとして、防水生地を使った製品の製造が一番最初に思いつき、このブランドを立ち上げることになりました。

KENROKUの写真。商品名も石川県にちなんだものから取っている。

BUKE JK と BUKE PT

ーブランド名の由来について教えてください。

【佐越】〈F/ACSION〉のFに様々な想いが込められています。1つ目は「FACTORY」のF。弊社はもともと工場から始まった会社なので、工場を大切にしようという意味と自社工場でこだわったモノづくりをしようという気持ちが込められています。2つ目は「FUNCTION」のF。このブランドは機能性に特化した洋服であることから、この単語の頭文字も含めています。3つ目は「FASHION」のFです。今までやってこなかったファッションの分野に新たに挑戦するという意気込みが込められています。

ー生地はブランドオリジナルのもので、こだわった部分であると伺いました。どのような生地なのでしょうか?

【佐越】OEM生産をする中で沢山の生地を触れる機会がありました。そうしたことから生地メーカーさんとの付き合いもあり、この〈F/ACSION〉を立ち上げるにあたり自分たちでオリジナルの生地を作るところからスタートしてます。地元の北陸の素材を使っているということもこだわりの一つです。

〈F/ACSION〉のコンセプトはオールウェザークロージングということで、雨の日に限らず、普段から着ていただきたいという想いがあります。レインウェアって雨の日に着るもので、マイナスイメージを抱いている人がほとんどではないかと思います。仕事をしていて、常々そのこと感じていて。そういうネガティブな印象を〈F/ACSION〉を通じて変えることが出来たらと思っています。

普段から着ていてもストレスが無いように、生地は軽くて、ストレッチが効いて、抵抗感がないようなものを目指しています。従来のレインウェアにありがちなカシャカシャ・テカテカとした質感も日常使いだと気になるという声があり、この生地はそういった面からも配慮しています。

しなやかで伸びの効く生地。軽くて丈夫なため、アウトドアシーンでも大活躍。

日常使いしやすいように、縫い目もできるだけ目立たないように工夫しているそう。メーカーならではの細かい気配りを感じられる。

ーレインウェアのイメージを変えていく、壮大で夢のある話ですね。でも〈F/ACSION〉なら実現できると思います!では最後に、モノづくりをしているうえで大切にしていることはありますか?

【佐越】前垣が創業当時からこだわっているのは品質です。同じような商品を作っているブランドでも、外部の工場に生産を委託している場合がほとんどで、自社で作っているブランドは少ないです。前垣は工場からスタートしたということから特に品質の部分にはこだわりがあります。自社で一貫して生産しているからこそいいものが生まれると信じている。品質という要素は今後のモノづくりでも大切にしていきたいです。

人の苦手意識や嫌悪感は簡単に変わるもの。いつもぶっきらぼうで怖そうにしている上司や、見た目やにおいが苦手だったあの料理。ふとしたことから話してみれば心優しい人で、勇気を出して食べてみれば案外美味しかったり。苦手意識や嫌いなことを変えてくれるのは案外些細なことがきっかけになるのです。雨をいやだな、憂鬱だなと思っているそこのあなた、〈F/ACSION〉のレインウェアがあればその考えをすっかり変えてくれますよ。

  • 株式会社前垣

    株式会社前垣

    前垣の創業は遡ること、1914年。 拠点は北陸の石川県金沢市。 北陸といえば雨や雪が多いことで知られるが、 金沢市では1年の降水日数は約185日と言われている。 つまり一年の約半分は雨と共に暮らしている地域なのだ。

Text & Photo:
宮﨑涼司

人一倍、服が好きなCRAHUGのジャーナル担当。給料のほとんどをファッションへ投資する。好きなメディアは「AWW MAGAZINE」と「NEUT MAGAZINE」。

Date: 2021.09.24

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