かつてシャツ地で有名だった”播州産地”を皆さんご存知でしょうか?シンプルなシャツ地とは対照的な、カラフルで立体的なジャガード織は個性溢れる産地の方々によって作られています。〈POLS〉というブランドを通して、播州産地の未来とモノづくりに真摯に向き合われている産元商社、株式会社丸萬のプロデューサー・丸山洵平さん、設計士の上田善則さん、デザイナーの宮本祐子さんのお三方にお話を聞いてきました。

左から宮本さん、上田さん、梶原さん、丸山さん

丸萬さんの本社がこちら

―何年創業になりますか?

【丸山】1901年創業して以来、120年になります。創業当時は400台のジャガード織機を入れて開始したという記録は残っています。

―地元の老舗の企業として会社を運営される中で、自社ブランド〈POLS〉を立ち上た経緯を教えてください。

【丸山】自分がNYから日本に戻った2013年。産地が縮小している中でこだわったモノづくりはできてはいるけど、それをうまく世の中に伝えることができていませんでした。僕らの素材というのは他にない素材。しかし、どうしてもファッションというのは無地が多くて…なかなか変わったものというのは料理しづらかったり、生産のトラブルも多かったりするので、あまり使い続けてくれるお客さんがいませんでした。東京のハイブランドさんが使ってくれる中で、生産も安定してきたり、レベルも上がってくる。それでも数量としたら限られるし、注文がないとできません。自分たちが出したいものを、出したいタイミングで、自分たちが決める値段でやろう!ということを2013年くらいから梶原さんと話し始めました。今でちょうど6年くらいです。

プロデューサー・丸山洵平さん

―その際、梶原さんとはどういった話をされましたか?

【丸山】この産地が困っている中、梶原さんからこういう方法もありますよとうちの社長に話してくれました。あと、上田と梶原さんで”多重織り”という、織物を層で考えて色々なことをするというのを長年磨いていました。その技術を生かしたものをやろうと、初めは〈多重織り企画〉という名前で始めました。

―独自の織物、”多重織り”の設計をされている上田さんにとって、お仕事で大変なことは何ですか?

【上田】納期管理・・・(笑) 確かに、昔は「なぜ織れないか?」と苦労しました。試行錯誤する時間がすごくかかった。今はこんな織物やってくれと言われてもあまり悩まないですね。ぶっちゃけ言うと(笑)それだけ昔苦労して研究して、梶原さんとモノづくりの中で培ってきたものがあるから…織組織、織表現でできん!と思うことはないです。

織機工場の職人さんと談話する上田さんと梶原さん。丸山さんや上田さんにとって、ディレクターの梶原さんはお姉ちゃん的存在だとか。

表面のテクスチャ―感やフリンジ状の毛が出ているのは多重織りのジャガードならではです。

―梶原さんがデザインされたテキスタイルを服にデザインされている宮本さんにとって、お仕事で難しいことは何ですか?

【宮本】モノを作るときはこれを作るからこういう素材が適しているという選び方をすることが多いと思うんです。うちは逆で素材ありきのものになってしまうので、ある程度方向性は素材が出来上がった時点で決まっています。しかも、前職はパタンナーだったので、入社して初めてデザイナーの仕事をして、最初は全く分かりませんでした。生地に対して合っている形・デザインを考えるのは難しいです。その上で可愛さとクオリティの両立はこれからも悩みながら続けていくと思います。

―そういった困難な場面もありつつ、逆に喜びやうれしさを感じる場面はどこですか?

「平面なものを立体にするのが好き」という宮本さんは仕事の時の真剣な眼差しとオフの時の笑顔が印象的でした

【宮本】接客をしていてかわいいと言って、買ってくれたら一番うれしい。最終的には人が身に着けたりするものなので。街中で〈POLS〉を着用してる人を見かけることが目標です。

ー未来のものづくりに向けて取り組まれているSDGsのゴールはありますか?

【丸山】今までのファッションの流れだと先に作って、それを販売にかけて、最後になったらセールにかけて次のシーズンへ…という形だったんですけど、僕らは先にサンプルを作って、ちょっと安く受注をかける。その注文の数量に応じて、作る数量の山を張る感じで、作らないこともあります。できるだけロスなく作るというシステムにしたいけど、この暑い夏の時期にアウターとかを考えないといけない。お客さんの気持ちとしたら逆行しているんですけど、「そういうやり方をしたいんです」とお願いはします。そういった点はSDGsの”つくる責任つかう責任”を意識していますね。他にも、残糸をつかったりだとか、そのシーズンで作った生地をまた次のシーズンで使ったりだとか、できるだけ”ものを大切に扱う”ということをしています。

工場に保管されている糸にのっているのは埃ではなく”綿のわた”なんです。

ー最後に今後の展望を教えてください。

【丸山】産地の大きな流れで言うと落ちてきているところなので、それを安定させたいというのがやっぱりあります。 まずは一緒に働いてるチームメンバーがハッピーになれるっていうこと。僕の仕事がチーム作りなので、そこできちんと働いた分達成感に結びつきつつ、喜んでくれる人がいる、というのをいかに考えて準備できるかというのが仕事だと思っています。「どれだけみんなを笑顔に出来たか」というのが直近の展望です。もっと先に行くと、上田の作るジャガードは、突き抜けたモノがあります。それをいかに世の中に広めるか、吸収してやってくれる若者がいるかなど、”世界一のジャガードブランド”にするというのが広い展望です。あとは昔、西脇はシャツ地で世界を席巻した時代がありました。ジャガードではないかもしれませんが、西脇というモノづくりの産地で新しい産業の形ができるのが夢です。

関わる人と人。織機という機械だけではモノづくりはできません。地元の産地を熟知した人とモノづくりに憧れて産地に入る人。それぞれ違ったバックグラウンドや視点を持ちながらも、同じ目標を持っています。人と人とのシナジーでできた〈POLS〉は、産地の未来をより明るくしてくれるのではないでしょうか。

  • 株式会社丸萬

    株式会社丸萬

    POLS(ポルス)は、創業1901年の先染織物メーカー「丸萬」(兵庫・西脇市)と、 テキスタイルデザイナー梶原加奈子とのコラボレーションにより、2015年に誕生しました。 ジャカード織りで制作された、インテリアやファッションのアイテムを中心に、 「テキスタイルの楽しみ」を発信していきます。 人の微かな息使いのような色合いも、複雑に想をなす心のような模様も、すべてを「織り」によって作った、一枚の織り布。 それこそPOLSの根本の世界です。

Text & Photo:
上野結佳

若手メンバーのお母さん的存在。学生時代にニューヨークでの留学経験を持つCRAHUGのSNS担当。週末は作り置き料理を作る。好きなレシピアプリはクラシル。

Date: 2021.10.20

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