【対談】
NEW ENERGY プロデューサー石塚杏梨
二人にとっての、「つながり」とは 後編

展示会、マーケット、メディアを内包した新時代の複合型イベントである「NEW ENERGY(ニューエナジー)」。従来の展示会のイメージからはかけ離れた、未来を予感させてくれる新進気鋭のクリエイションの祭典です。そんなNEW ENERGYのプロデューサーを務めるのが、石塚杏梨さん。かつて運営していた展示会rooms(ルームス)での経験を活かし、世界中の素晴らしい作り手とバイヤー、そしてユーザーであるお客様を繋ぐ新たな場所として、2022年から同イベントを主催しています。そんな石塚さんとCRAHUGのディレクターを務める梶原さんとの対談の模様を記事にしました。繋がる場所を提供する両者にとっての”つながり”とは何か。これからどのような”つながり”を期待するのか。前編と後編の2部に分けてお届けします。後編ではバイヤー目線から見た日本のモノづくりについて、両プロジェクトの今後の展望について伺っていきます。

前編はこちらから


”控えめは美徳”はもう終わり

ー沢山のモノづくりを見られてきたお二人にとって、日本と世界のモノづくりとの間に違いを感じることはありますか?

【石塚】個人的なことを言うと、日本と海外という視点でモノづくりを見る事があんまりなかったです。海外への憧れもあまり無くて。ただ違いという視点で言うと、日本のモノづくりにはいい意味での”ガラパゴス感”があるなと思います。日本の物は垢抜けない印象はあるけれど、個性的なものが多くあるイメージです。あとは独創的な製造技術もあります。そういった違いが日本と世界のモノづくりにはあるかなと思います。

【梶原】だから海外の人は、日本のモノづくりに興味があるのかもしれないですね。きっといい意味でずれているので。島国ならではの独特な文化の変形ですよね。ベタな話で言えば、海外の方は原宿のファッションが好きで、でも日本人にとってみればなんてことない風景の一部なんですよね。きっと海外の人から見ると、そこにカルチャーを感じるんでしょうね。

【石塚】違いというと”発信力”という点において乖離があるかもしれませんね。問題点というより改善すべき点かもしれませんが、自社商品の魅力を伝えることに苦手意識を持つ作り手が多くいる印象です。それでも10年前と比べると皆さん発信力もPR力もすごく高くなっていると思いますが。。モノを生み出すエネルギーと同じぐらい、完成したモノをお客様に伝える努力が必要です。「良いものは勝手に売れる」という事はほとんどなく、良いモノの魅力をしっかりと伝わるように伝え切ったモノのみが売れるのだと思います。

【梶原】とても分かります。日本人は控えめにすることが美徳、みたいな感性があるので、伝えることに苦手意識があるんでしょうね。海外のブランドと比較すると、日本のブランドはプレスやPRの部分に弱さを抱えているのかもしれません。控えめが美徳という価値観はもう終わっていくべきで、逆にどうやってブリッジしていくのかがカギになるのかなと思います。

【石塚】専門の学校を卒業しても、どうしたらいいかわかんないっていう人、沢山いますよね。学校では素材のことや洋服の作り方は教えてくれるけど、その先の売り方やPRの仕方までは教えてくれないから困っている人が多くいるって言うのは聞いたことがあります。PRするにしても、何をどうやって誰に向けてPRするのかが重要で、そういったブランドの見せ方もきちんと研究していかないといけないですね。

クリエイションを軸に、人々が集まる場を

ーNEW ENERGYの次の開催は22年9月を予定と伺いましたが、今後のプロジェクトはどのような展望を想定していますか?

【石塚】クリエイターがモノづくりに専念できるようなインフラを整える事が目標です。今はモノづくりをする人が、販売からPRまで一貫して行っている中でなかなかクリエイションに専念できていないという現状です。クリエイションに興味のある人を集客できるようなイベントを開催する事、オンライン販売のノウハウを提供する事、など作り手の支えになるような場づくりこそ自分たちがやるべきことだと思っています。私たちはクリエイションが大好きで、モノづくりをしている人たちのおかげで、幸せな人生を歩ませてもらっていると思ってます。だからこそ、モノづくりをしている人たちを、一番近くで支えたいと思っています。

【梶原】本当にその通りですね。CRAHUGもNEW ENERGYと同じように場づくりをして発展していきたいと思っています。その場に参加している人達でスクラムを組んで、一緒に頑張っていけるようなチーム感を大切にして、取り組んでいけたらなと思っています。私自身沢山のプロジェクトに携わって、単発的に終わってしまうことも沢山経験しています。CRAHUGもNEW ENERGYも継続することで、本当の支えにつながると思うので、小さな規模でも続けていきたいと思っています。

ーでは最後に、お二人がこれから期待する繋がりは何ですか?

【石塚】スモールビジネスの人たちの集合体で、一つの小さな経済圏を作っていきたいなって思います。クリエイターと、モノづくりが大好きな人たちの社会の中で、お金も含め循環していくようなイメージです。ここに来れば、面白いクリエイターと出会える、ステキなお客さんに出会える、技術のある工場に出会える、といったようにクリエイションを軸にして、人々が集まるようなことが出来たらなと思います。

【梶原】私も同じようなことを考えていました。今の世の中、大きな塊を作ることは難しくて、大きなチームだとビジョンが見えにくくなってしまうことも多いんですよね。その反面、同じ想いを共有した小さな塊だと動きやすいし、目標を達成しやすい。この小さな塊を少しずつでも形成出来たらなと思っています。最終的には、小さな塊同士での交流があれば、どんどんその輪が広がっていって発展していくのだと思います。

【石塚】やっていることは違っても、感性が近い人となら手を取り合って一緒に発信しようみたいな動きが最近は多くあるなと思っていて。その点で言えばNEW ENERGYとCRAHUGはやっていることは違うけれど、根底にある思想や目指している目標は近しいものだとすごく感じています。なのでいつか一緒に手を取って、何かできればなと思います。二つのプロジェクトのそれぞれのお客さんが繋がり合ったら、とても素敵なことだなと思います。


あとがき

CRAHUGの商品の中から、お互いに贈り合うならというテーマのもと選んでいただきました。旧知の仲で、共通するルーツを持ったお二人が選んだ商品は何だったのか、紹介していきます。

“石塚さんから梶原さんへ贈りたいもの”

01.〈槇田商店〉の「傘」

「槇田商店の傘はプライベートでコレクションしているほど、すごく好きで。梶原さんにはロンドンに行ったときに、この〈槇田商店〉の傘を差してほしいなって思います!」

02.〈神代椿〉の「オイル」

「テキスタイルを触っていると、どうしても手が乾燥してしまうので、このオイルを選びました。カジュアルなお土産として持っていくのにちょうどいいと思います。」

“梶原さんから石塚さんへ贈りたいもの”

01.〈ceramic mimic fabric〉の「冷酒セット」

「マット感の中に優しいテクスチャーがあって、ずっと触っていたくなるような商品です。晩酌の時に使ってもらえたら、きっと心が安らぐだろうと思って選びました。」

02.〈Nokton〉の「タオル」

「私も実際に使っているものですが、心地よいし、色も良くて、とても気に行っています。自分の実感も込めて、プレゼントするならこの「タオル」かなと思います。」

Text & Photo:
宮﨑涼司

人一倍、服が好きなCRAHUGのジャーナル担当。給料のほとんどをファッションへ投資する。好きなメディアは「AWW MAGAZINE」と「NEUT MAGAZINE」。

Date: 2022.06.20

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