ヨコスカジャンパー通称”スカジャン”。背面にある刺繍が頭に浮かびますが、もともとは着物への刺繍の練習台だったらしい。着物からtシャツまで、糸を縫い付け多種多様な模様を表現する”刺繍”。今回は群馬県桐生市より刺繍アクセサリーブランド「embland」の村田刺繍所の村田さんにお話を聞いてきました。

織物と桐生

織物の町桐生。「西の西陣、東の桐生」と称賛される日本を代表する織物の産地。あるときには日本政府の財源の4分の1は桐生の織物であるなんて噂が流れたとか。そんな桐生では織物産業の発展とともにさまざまな縫製や染色などの加工業も発達してきた。刺繍もその1つで、現在でも1oo軒ほど刺繍業を営んでいます。まずは村田刺繍所の創業から伺いました。

ー村田刺繍所は何年創業ですか? 【村田】1955年に私の祖父が創業しました。創業当時は和装品の半襟や帯とか、スカジャンの刺繍を横ぶりミシンで行っていたらしいです。

ー創業当時と変わったことはありますか 【村田】まず変わらない所は、うちの会社の精神の「一針千心」ということで。1針、1針真心を込めるという思いは創業から変わらず大事にしています。

ー逆に変わらないことは? 【村田】時代によって和装から洋装っまで婦人服主体でやってきたんですけど、今の時代はできることはなんでも取り組むという姿勢に変わりましたね。婦人服の刺繍だけではなくて、紳士服であれ子供服であれそれ以外にもバック、ストール、アクセサリーとか全部同じ機械を駆使して刺繍しています。これが結構技術が必要なことだと思ってて、同じことを続けていけることが1番なんですけど、それだけではだめだといろんなことに挑戦してます。

”刺繍する国” を表現する繊細さ

ーその挑戦の1つが今回の刺繍アクセサリーブランド〈embland〉なんですね。 ちなみに名前の由来はどこから来てるんですか? 【村田】刺繍するという意味の「embroider」と国の「land」から刺繍する国というところから名付けました。「em」には¥の意味も込められていて日本のブランドとして世界に発信していきたいと思っています。

ー「刺繍する国」なんだか楽しそうな国ですね。こだわりのポイントはどこですか 【村田】「繊細さ」です。レース調の刺繍をアクセサリーということもあってつくるのは簡単ではないんですけど、思い描いていたデザインが細かな部分まで表現できるように刺繍の技術にはこだわっています。うちが元々レースや薄い素材に刺繍してきていたのでこういったところには自信があります。

ー「一針千心」の精神が〈embland〉にも表れているんですね。 ところで〈embland〉は工場の残糸と新しい糸が組み合わさっていますよね。 【村田】いろいろなお客さんの要望に応えるためもあって、かなり多く糸を買うことが多いです。一度買った糸を最後まで使い切ることができればいいんですけど、10年経った糸なんかはすこし色が変わってしまうんですよね。もちろん品質的にはまったく問題ないので〈embland〉でその糸を無駄なく使うことができれば、地球にもやさしいですからね。

ーとても素敵なことだと思います。 最後に今後の展望を教えていただけますか? 【村田】 桐生の刺繍は存続させていきたい。やっぱり産地ありきなんですよね。桐生という産地あっての村田刺繍所だと思ってます。デザイナーの方にもよく聞くんですけど桐生にいけばなんでもあるよと。それほど機屋から染めまで服のことならなんでもある産地です。1刺繍屋としてこの産地守っていくことになんとか貢献できればと思ってます。

Text & Photo:
田副太一

CRAHUGの撮影・イベント担当。毎週火曜日に映画を見に行くのがライフワーク。写真は愛犬のハル。

Date: 2021.10.15

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