【梶原加奈子の想いごと対談】
受け継がれる
“道しるべ”と“一貫工程”のこだわり
株式会社ポインターシューズ

上質な革の品質、快適な履き心地、合わせやすいデザイン。モノづくりの追求と価格のバランスにおいて努力を惜しまず、顧客を魅了し続ける<Pointer(ポインター)>の靴はCRAHUGでも大人気です。日本で製造する靴が現在も活躍する背景に、感覚知による職人技を鍛錬し、継いでいく人たちの情熱があります。なぜ<Pointer>は実行できるのか。 55年にわたる会社の歴史から魅力あるデザインの源について、株式会社ポインターシューズ・専務取締役 安田正司さんとCRAHUGディレクター梶原加奈子が対談し、ものづくりのこだわりを語り合います。
神戸・長田産地の歴史と創業者の歩み
梶原:神戸は現在も靴づくりが盛んですね。産地の歴史背景から伺いたいです。
安田さん:兵庫港が1868年に開港し、西洋の人たちが来日して靴の修理・新調を始めたことがきっかけだと聞いています。 最初は革から始まったのですが、1950年代ぐらいにタイヤメーカーなどが成長し、使い勝手が良いゴム製品である「ケミカルシューズ」も瞬く間に広がりました。
梶原:その中で、革靴の製造業として株式会社ポインターシューズが創業された歩みも伺いたいです。
安田さん:先代の安田永池は学校卒業後、機械の部品を0.1mmまで合わせて制作する仕事に関わりました。それから靴工場に転職し、ミリ単位でこだわって靴の紙型を作る腕を磨きました。自分でも靴をデザインし、卸のお客様から注文を頂き、量産に向けた材料の調達や生産管理など一通りの経験を積み重ねてから独立を決意し、革靴メーカーとして株式会社ポインターシューズが誕生しました。 以前お世話になった靴工場が合成皮革を使っていたため、同じものを作らないように本革に絞ったと聞いています。 先代はものづくりに自ら手を動かし何度も作り続け、徹底して追求する人です。靴だけではなく、服も建築も材料や形にこだわりがあり、色々なことに興味を持っていたと思います。
梶原:先代の追求心が今の商品に繋がっていますね。会社名でありブランド名である<ポインターシューズ>の名前の由来を教えていただきたいです。

Pointerのロゴデザイン
安田さん:Pointerという言葉は、北極星をもとに先代が名付けました。船旅や航海の中で、北極星が方角を知るための大切な「道しるべ」となります。何か方向を決めるとき、関わる人たちを導いて引っ張っていける。そんな存在としての意味が込められています。

先代の安田永池さんと現在のPointer専務取締役の安田正司さん
<Pointer>の思想を継承する人たち
梶原:先代が追求した思想が、どのように安田専務や社員の皆さまに継承されていますか?
安田さん:私は入社して30年ですが、日々同じことの繰り返しではなく、自ら考えて試行錯誤する姿勢が大切だと教えられました。先代は多くは語らないのですが、日々一緒に動くことでイメージしている感覚がテレパシーのように伝わってきます。 それが「道しるべ」となり、<Pointer>らしい形に何十回も挑戦する姿勢を教えていただきました。

日々シューズと向き合いながら作成する様子
梶原:デザインについてはいかがでしょうか?
安田さん:最初に1人が全ての工程を一貫して靴を仕上げます。そのため、完成した商品には手掛けた人の雰囲気や佇まいが現れていると思います。 また、木型の段階からこだわることで、<Pointer>の履き心地はこれだ!というものが出来上がるので、ものづくりに関わる社員たちには履き口からつま先までの感覚を合わせていきます。何度も修正をかけることもあるので、その時は僕が実際に手を動かして共有します。靴はパーツも工程も多いからこそ、根性というか、向き合うしぶとさが必要です。この姿勢が、今まで生き残ってきた理由でもあると感じます。
梶原:“一貫工程”を継承し “職人の感覚知”を受け継いできたのですね。現在専務として安田さんがご活躍されていますが、家業を継ぐまでの道のりを教えてください。
安田さん:小さい頃から絵を描くことや、工作も好きでした。学生時代に船舶の荷物の引き上げや、塾講師、飲食店の仕事を経験してから、イタリア製品を輸入・企画しているお店でアルバイトをしました。そこで接客やディスプレイに関わりつつ、靴の紙型に触ることができた時は、面白くてのめり込みました。紙型の学校に通い、木型を教えてくれる工房に顔を出して靴の世界がどんどん広がり、ポインターシューズに社員として入社することを決意しました。
梶原:面白いと思えることが才能だと思います。安田専務もお父様と同じように“ものづくりの気質”を持っており、自分自身で発想し追求する人ですね。


専務取締役の安田正司さんが手がけた木型
安田さん:見本になる先輩方がいたことや、協力してくれる人が<Pointer>には沢山います。先代の時から関わる方を大事にしていたから、周りにいる人たちからも思想や環境、感覚を大事にしてもらえていると思っています。その上で、私自身も好きなものづくりを継続できていることに感謝しています。
「道しるべ」をもとに挑戦する自社販売ブランド
梶原: 創業から55年間、ポインターシューズの技術は様々な卸先の商品として市場に販売されてきたと思いますが、いつ頃から自社販売ブランドが開始しましたか?
安田さん: 2022年に自社ブランドとして<Pointer>を立ち上げました。 最初の頃はコロナ禍の期間で販売が難しかったです。今の社長の山口が靴業界のECサイトで活躍した経験があり、そこでPointerの靴を少しずつ販売してみました。その後、東京の展示会に出展したところ、CRAHUGの皆さまに見つけていただいて、去年の10月後半から、ONWARD CROSSETでPointerの販売が開始しました。お声を掛けていただき、本当にありがとうございます。
梶原:CRAHUGではちょうど靴の販売を強化していきたい時期で、日本産ブランドのリサーチを強化していました。 Pointerさんを取り扱ってから、すぐに大人気となり、ONWARD CROSSET顧客との相性の良さを実感しています。履き心地、デザイン、価格的にちょうど顧客層に一致している部分があり、この成果に繋がっていると思います。在庫の調整や確保の判断が円滑である点も売上成果の成長に繋がっていると思います。CRAHUGに参加してみて変化したことはありますか?
安田さん:商品企画をするときに、ONWARD CROSSETで商品を購入するお客様をイメージするようになりました。サイトを拝見したりお客様の声を見返したりして、私たちの次のデザインの「道しるべ」になりつつあります。
<軽さ>と<柔らかさ>によるリピーターの増加
梶原:CRAHUGでも大人気のPointerの靴ですが、靴底のこだわりにも注目しています。
安田さん:靴底は日本だけではなく、海外のメーカーさんにも生産をお願いしています。軽くて柔らかな品質ができるように、自分たちのオリジナルモデルの金型で作りました。超軽量な靴を作るために底の外回りを縫製するアウトステッチ製法を取り入れています。甲の部分はクリーピング(靴の甲の部分に立体的なカーブをつける製法)にしてこだわりました。
唯一無二の靴だと思いますが、実は自分たちで売り出してみると全然売れなかったですね。 でも、CRAHUGさんで「軽さ」を全面的に打ち出していただき、人気商品となりました。
梶原: Pointerのものの良さと価格のバランスにはいつも驚きます。価格についてどのような努力をされていますか?
安田さん:卸売業界や量販店を今まで経験してきたからこそ、本当にいい材料を安く安定的に仕入れるためにはどうすべきなのか現場に立ち考えながら動いています。あとは、紙型など手直しも自分たちで無駄のない工程になるように工夫して出来ています。そこが価格にも表すことができているのではないかなと思っています。先代は「決して自己満足になってはいけない。1週間経って、また見てみた時に気づくこともあるから。時間をおいて離れることも大切。」と言っていました。

ミシンでシューズのステッチを縫う様子
梶原:1つ1つの工程にお客様ファーストの精神がありますね。顧客の皆さまがリピーターになっていくのもわかります!!
安田さん:CRAHUGさんは今回のようなジャーナル記事で、私たちのものづくりの想いやこだわりを紹介していただき、お客様の声を私たちに届けてくださる架け橋のような存在です。
梶原:お客様とPointerさんの「道しるべ」となれるように、これからもCRAHUGは<想いを伝え合うこと>を大切にしていきたいと思います。スタッフさんが1ヶ月ほど試し履きをし、シューフィッターの資格を持つ職人さんが何度も改良を重ねようやく、安心して履いてもらえる靴が完成すると伺いました。1本の軸が通っているPointerの商品には、1人1人の情熱がある。日々の懸命な努力が、商品を通してお客様の心にも届いていると思います。 今回は安田専務と対談する中で(株)ポインターシューズの歴史から、成長の過程や商品のこだわりを伺いました。 沢山のお話しを聞かせていただき、ありがとうございました。




